美咲ちゃんと「ゴンちゃん共通の原則」

HKM例題集 第一話「かわいいネコの育てかた」

 

◆チャプター1:美咲ちゃんと「ゴンちゃん共通の原則」

三崎 美咲(みさき)ちゃんは16歳の女子高生です。昨年の春高校に入学し、あと2ヵ月で高校2年生になります。美咲ちゃんは「みさき みさき」と言う名前を除いては取り立てて変わったところはない普通の女子高生です。勉強もスポーツも苦手と言う訳ではありませんが得意と言う訳でもありません。学校生活にも不満はありませんし、家族ともわりと上手くやっています。

「みさき みさき」と言う名前のせいで小学生の頃はよくからかわれましたが今は特に不満はありません。「みさき みさき」がヘンなのは名字と名前が同じ事だけで、美咲と言う名前がヘンだと言う訳ではありまん。だから結婚して相手の名字になれば完全に普通の名前になるのでノープロブレムです。

でもこの計画ついては心配事というかモンダイが有ります。もし結婚相手の名字が以前見た映画のヒロインのように「ごんだわら」さんみたいな名前だったらどうしようと言う事です。

映画の中のヒロインは好意を持った男の子に「名前をおしえて」と言われた時に、「権田原」と言う自分の名前を相手に伝えることをためらいました。ごんだわらと言う名前を聞いた時の相手のリアクションは想像がつくからです。その結果彼女は恋を失いかけました。そしてその彼女は、わたしのニックネームは必ず「ゴンちゃん」になると映画の中でため息をついていました。

美咲ちゃんは今まで友達から「みさき」とか「みみ」とか呼ばれています。でも権田原さんと結婚したら「権田原 美咲」になります。きっと私もみんなから「ゴンちゃん」と呼ばれることになると考えると少し悩んでしまいます。それだけではありません。自分は好きな人結婚するので良いとしても、自分が女の子を生んだ場合その生れたその子は映画のヒロインと同じように恋を手に入れるチャンスを失うことも心配です。

美咲ちゃんは最近になってこの「ゴンちゃん」というニックネームについて思いついたことがあります。この思い付きに名前を付けるとしたら「ゴンちゃん共通の原則」という感じです。それはこのようなものです。

①新しい学校、クラス、会社で自己紹介をした場合に、「ごんだわら 〇〇です」と言う名前を聞いた人は「ごんだわら」の印象が強すぎてとても「〇〇」と言う名前には意識が及ばない。

②この時点でその「ごんだわら 〇〇」さんは「ごんだわら」さん以外の何者でもなくなってしまう。

③そして次にその場にいた人たちには「ごんだわら」とか「ごんだわらさん」と呼ぶことに対して、または呼ばれることに対して、「大げさ過ぎる名前で、いやだろうな」とか、「若い女の子は、はずかしいだろうな」見たいな、「ごんだわら」と言う姓を持つ人たちに対して「老若男女」を超越した気遣いが働くことになる。

④だから、その結果「ごんだわらさん」は老若男女に関わりなく呼び名は「ゴンちゃん」になる。

⑤だとすると「ゴンちゃん」と言うニックネームは個人のものではなく、親子兄弟、いや、ニックネームが「あだ名」と呼ばれていた時代から現代までのすべての「ごんだわら家の人々」の共通のニックネームなんじゃないのか!?

と言うようなものです。

美咲ちゃんはこの「ゴンちゃん共通の原則」に気が付いてから「この気の遠くなるような歴史的連鎖を高校生の自分がなんとかできる訳が無い」と時々ため息が出ます。

美咲ちゃんは思います。「『ごんだわら』さんと言うのはきっと由緒ある、どっかの旧家で、先祖はきっとエライ人だったのでしょう。そんな偉い日本全国にいる『ごんだわら』さんには申し訳ないと思うのですが、女子高生には『ごんだわら』は似合いません。だから神様助けてください」と。

つづく

By Hiro

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